仕事しなさい!
須賀くんが近付いてくる。
私は後ずさる。
踵が転がった空き缶に当たり、よろけた。

須賀くんが手を伸ばし、よろけた私を一息に抱き寄せた。


「離して!」


私は強い口調で言う。
しかし、身体は1ヶ月ぶりに吸う彼の香りに歓喜していた。

離れたくない。

離してほしいのに、離れたくない。

須賀くんが私を更にぎゅっと抱き締める。


「倫子さんは関係ないって言えるかもしれないけど、俺は無理です。
好きな女が泣いていたら、放っておきたくない」


「私には関わらないでくれるんじゃなかったの?」


「努力してます。死ぬほど努力してます。
でも、苦しい。誰といても倫子さんのことばかり考えてる。あなたの替わりに他の女の子とセックスしようともした。でも、できなかった。
あなたじゃなきゃ、嫌だ」


「むしのいいこと言わないで!
私はきみみたいな男に振り回されたくないの!私に構わないで!」
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