仕事しなさい!
須賀くんが私の耳に唇を寄せる。
切ない声がささやく。


「今だって、倫子さんの涙が俺のために流れてるんじゃないかって、
期待してるんです……」


ああ、この子はまだこんなに私のことを想ってくれている。

きみの期待の通りだよ……。
私はきみを想って泣いてるんだ。


「離して」


離れたくない。


「倫子さん、好きだ」


私も好き。
大好き。

あんな目に合わされても、
須賀くんを嫌いになれない。

背を向けるほど、どんどん好きになっていく。

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