仕事しなさい!
渡はブラウンの髪をがしがしと掻く。
困り顔だか、照れ笑いだかのまま、答えた。


「海で倫子さんから振られた後ね、俺あっさり引いたように見えたでしょ?
でも、あの頃、毎晩倫子さんちの近くまで行ってました」


「………マジで?」


「マジっす。あの前後って、結構西村のガードがきつくて、会社じゃ倫子さんの姿を垣間見るくらいしかできなかったから。家の周りうろついて、あわよくば帰り道の倫子さんと会えないかなぁって。ゴミ出しする倫子さんや、コンビニに行く倫子さんと会えないかなぁって、考えてたわけですよ」


「………」


「実はダンスも見に行ってました。っつうか、ダンスは倫子さんに絡む2ヶ月前くらいから、毎週通ってました。倫子さんを落とそうって、後つけたのが最初なんですけど」


私は黙った。
それって……。


「まさかのストーカー?」

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