黄昏の真心
こうなることも、運命か――
クラウスは、そのようなことを考えてしまう。占いの力がなければ、多くの者達はこの災害を「運命」として、受け入れる可能性もないわけではない。
それにこれが最初から決められていたことであったら、それに反することを行おうとしている。そう思った瞬間、クラウスの表情が変わった。
(何を考えているのか)
今までこれと同じようなことを行ってきたというのに、どうして迷ってしまうのか。
正直、クラウス自身もわからなかった。浮かび、そして消える不安感。
しかし、迷っている暇などない。
気持ちを落ち着かせる為に紅茶を一口含むと、本格的な占いを開始した。そう、やるべきことはやるしかない。
クラウスは、生まれ付き高い魔力を有していた。
それを用いり、今まで占いを行ってきた。
その方法はふたつ。
ひとつは、カードを用いたもの。
そしてもうひとつは、水晶を用いたやり方だ。
それは、水晶を覗いて未来を見るという、一般的な占い方法とは違う。限られた人物のみができる、方法だ。
クラウスは首にかけていたペンダントを取ると、それを日の光に透かす。
それは不純物が一切混じっていない水晶なので、強い魔力を受けやすい。クラウスはこれを用いて、位置を占う。
全ては、水晶の導きのまま――
精神を集中させ、一点を見つめる。
次の瞬間、周囲から音が消えた。
(この場所は……)
暫くの間、水晶はフラフラと適当な動きを見せる。
刹那、ある場所を指し示した。
その場所は、今クラウスがいる場所であった。それは城の周辺で、この場所に避難すれば助かると出た。
瞬間、大きな溜息をつく。それは疲れたという意味合いではなく、これで多くの人が助かるという安心感がそのようにさせた。
これにより決められた運命に逆らうことになってしまうが、クラウスは関係ないと結論を出す。
それに考え方を変えれば、占うことも運命のひとつになる。
「……報告しないと」
場所が判明したとなれば、後は報告をするだけ。実のところ、クラウスは国王に何も言っていない。
無用な心配――というのは建前で、占いの結果が上手く導き出されるか心配だった。
だが、それは取り越し苦労であり、このように無事に占いの結果を出すことができた。