黄昏の真心

 これにより、国王のクラウスに対しての信頼は更に高くなる。多くの民の命を救った人物として、語り継がれるに違いない。

 しかしクラウスは、そのようなことは望んでいない。

 ただ、自分が持つ力を使っただけ。その結果がこのようになったのだから、運が良かっただけだ。

 正直、迷惑――

 フローネの家庭教師を行いつつ、占いも行う。

 大変な毎日だが、充実はしていた。其処に変化が齎されたら、クラウスは普通の生活が行えなくなってしまう。

 そうなってしまったら、考えないといけなかった。

 この地を離れて、別の場所へ移り住む。それは容易なことではなかったが、騒ぎ立てられるのが嫌いなクラウスにとっては、その選択しかなかった。

 現に今も、少し煩い時があったりする。

(言われてしまう)

 ふと、フローネの表情が脳裏を過ぎった。このことを決定した場合、何よりフローネが煩いだろう。

 何だかんだ言いながらクラウスのことを信頼しているので、立ち去ったら悲しむに違いない。

 いや、もうひとつ問題があった。それは、学力のことだ。クラウスの適切な教え方で、やっと成績が上がってきた。

 しかし、本人はいまだに難しいという。このことを総合すると、やはりクラウス以外が教えることは不可能で、何よりフローネの成績の多くに知られてしまう。

(どうするべきか……)

 これらのことを考えると、下手に違う土地に行くことができない。

 まさしく、板挟み状態。

 それに今は、この国に仕えている。

 この場合、自身の感情を封じることも時として必要だ。

 それに今は、やるべきことがある。自身の身の振り方は、その後でも考えられた。

 そう判断したクラウスは椅子から腰を上げると、部屋から出て行く。そして、国王のもとへ向かうことにした。


◇◆◇◆◇◆


 占い結果に、多くの者が驚きを隠せないでいた。

 まさか――

 誰もが、その考えが強かった。

 しかし、この結果を導き出したのはクラウス。嘘を付くような人物ではないと信じられているので、すぐに受け入れられた。

 それと同時に、対策が練られる。

 そして、この結果を知らせてくれたことに多くが感謝した。

 だが、クラウスは顔色を変えない。これは、当たり前のことだから。
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