黄昏の真心
褒められたい為に、占っているのではない。自身が有する力を役に立てたい――ただ、それだけのことであった。
占い師の中には恩賞を貰いたい為に占っている人物がいるというが、クラウスはそのような物は欲しない。
その為、家臣達から「堅物」と見られる場合も多い。
「其処に避難させれば、助かるというのだな」
「御意」
「お主が言うのなら、間違いないだろう」
「陛下。毎年、この時期は気候が安定しております。もしこの占いの結果がなければ、大変な事態を招いていました」
「うむ。では、備蓄の準備を急ぐのだ」
国王からの命令に、家臣達は一斉に動く。多くの民に食料を行き渡らせるには、かなりの量が必要となる。
それを短期間の内に集めなければいけないのだから、これは大変である。だが民の命には代えられないので、多くの者達が動く。
そう、誰もがクラウスの占いを信じた。
それだけ、信頼が高かった。
何より、その的中率が高いからだ。
占いが外れたことは、過去に一度としてない。だからこそ「堅物」と思う家臣達も、何ら疑問も持たずに動いていた。
「ところで、クラウス。フローネのことだが、どうなっておるのか。相変わらず、苦労を掛けている」
「いえ、そのようなことは――」
「聞いておる。今日は、礼儀作法を学んでいると」
「あれは、フローネ様の個性です」
目の前にいるのは、この国の王でありフローネの父親。流石に、本音を言うことはできない。
クラウスは言葉を選びつつ、当り障りのない言葉を述べていく。
しかし国王には、本音が伝わっていた。それにより、大笑いが響く。それも、腹の底から笑うような声であった。
「個性、それは面白い」
「も、申し訳ありません」
「いや、そういう意味ではない。あの性格は、困ったものだ。姫という立場なのだから、落ち着いてほしい」
「は、はい」
「クラウス。正直に申していい。嘘は、好まない」
相当手を焼いているのだろう、国王は溜息をつく。幼少の頃は、あのような性格ではなかった。
何処を間違えて、お転婆な性格になってしまったのか。考えたところで、適切な結論を出すことはできない。
だからこそ、国王をはじめ多くの者達が頭を悩ませる結果となってしまう。