黄昏の真心
クラウスという存在が現れ、やっと改善の道筋が見えてきた。しかし、それは亀のように鈍い。
だが、確実に前に進んでいることに、国王は内心は喜んでいた。これで、国の将来に希望を持つことができるのだから。
それだけクラウスという存在は大きく、失いたくない。
「娘の将来は、わかっているのか?」
「いえ、それは……」
「占っているのか?」
クラウスは何も言わない。占っていようがいまいが、クラウスは答える気はなかった。
それに、本当に占っていない。
このことを占ってしまえば、同時にこの国の未来を知ってしまうからだ。
未来を知ることができれば、そうならないように回避すればいい。
だが、それができるのは心が強い者。逆に弱い者は、それを運命として受け止めてしまう。
それにより、自滅を招く。
フローネは、どちらに当たるのか――
自由奔放で気丈に見えるが、本当の彼女は違う。クラウスはそのことを知っているので、占うことができないでいた。
「そのお答えは――」
「いや、止めておこう」
「……申し訳ありません」
「ここまで、お主の力に頼ることはできない。政は、占いの力に左右されるほど甘くはない」
その言葉に、クラウスは深々と頭を垂れた。賢いという人物は、このような人物を示す。
それを見抜いていたので、今までついてきた。もし馬鹿な国王であったら、疾う前に立ち去っていた。
なら、何故か――
先程までこの国から立ち去ろうと考えていたが、今はもう少しこの国に残っていいのではないかと思いはじめる。
それはフローネの為ではなく、この国の未来の為に――それに、占いに頼らない未来を見てみたかった。
ふとその時、唐突に国王は意外な質問を投げ掛けてくる。
「ひとつ頼みたいことがある」
「何でしょうか」
「娘の結婚相手のことだが――」
予想外の内容に、クラウスは間の抜けた表情を浮かべてしまう。確かに父親なら、子供の結婚相手が気になってしまうもの。
何より、あの性格。
結婚相手を選ぶ前に、結婚できるのか心配になってしまうだろう。クラウスと国王の間に長い沈黙が漂い、どうやら気まずい質問だったようだ。