黄昏の真心

 周囲は、厳しい学問をしてきた。そのことに気付いていないフローネは、相変わらず我儘を言う。

 クラウスは、思わず肩を竦めてしまう。

 同時に、このような生活も悪くないと思いはじめた。

 当初は大変な生活が続くので、早めにこの国を去ろうと思っていた。

 しかし、フローネの未来をこの目で見てからも遅くはない。

 占いで導き出した結末ではなく、真実の結末を――

「どうかしたの?」

「何か?」

「笑っているわ」

「笑っては、いけませんか」

 生真面目過ぎる返答に、今度はフローネがクスクスと笑い出す。クラウスは笑われた意味がわからないので首を傾げ、どのようなことを言いたかったのか尋ねる。

 だが、フローネは何も答えてはくれない。それどころかクラウスの腕を掴むと、何処かへ連れて行こうとした。

「フ、フローネ様」

「気分転換よ」

「勉強が、待っています」

「今日は、終わりよ」

 いつものクラウスであったが、間髪いれずに反論をしていた。

 しかし、今日は違う。

 素直に、その意見を受け入れることにした。この時、改めて認識する。彼女の為に、自分が必要だと。

 これにより、クラウスの運命が決まった。


◇◆◇◆◇◆


 その後、クラウスがこの国にどのくらい残ったのか記録に残っていない。ただ、長い年月平和が続いたというのは残っていた。

 フローネの未来は――特に、悪い噂はない。

 良き伴侶を得て、幸せな日々を送ったという。

 そしてクラウスはどうなったのかは、誰も知らない。

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