黄昏の真心

 その時、クラウスはあることを思い出す。それはとても重要な内容であり、フローネの苦手とすることであった。

 だが、言わなければならない。そう、これは本人の問題であったからだ。それにこれは改善しないといけない問題であり、フローネの今後に関わってしまう。

「フローネ様。例の件ですが――」

「身代わりに、なってくださるの?」

「いえ、別のことです」

「では、何かしら?」

「午後、作法関係の勉強を行うそうです」

「嫌です」

 その言葉に、フローネは間髪入れずに拒絶していた。しかし、クラウスに拒絶したところで何もならない。

 これには専門の先生がおりクラウスはいつも見ているだけなので、拒否権などない。

 礼儀作法がなっていないと判明した社交界。それは王家の面子にも関わり、何よりフローネの評判を落とす。

 そうなってしまえば結婚相手は見付からず、我儘娘を貰う奇特な人物はいない。

 それに、姫君には固定のイメージというものが存在する。それを崩すフローネは、褒められたものではない。

 やはり矯正すべき部分は、きっちりと矯正しなければ将来に影響を与える。

 いや、それは将来だけではない。現に多くの人物に影響を出し、特にクラウスが苦労している。

 だからこそ、周囲は動いた。

 よってフローネの意見など聞き入れられることはなく、全ては彼女を思っての行為。無論、クラウスそれに賛成で、今までのフローネは姫らしくない。

「フローネ様、そろそろお部屋に戻りませんと。勉強をいたしませんと、お互い怒られてしまいます」

「休みたいわ」

「いけません」

「毎日、つまらないわ」

 だが、クラウスにしてみれば「勉強をサボる」という行為は、受け入れることはできない。彼は占い師であると同時にフローネの家庭教師なので、甘えは許せない。

 フローネにしてみれば「厳しい」という意見になってしまうが、クラウスは別に差別しているわけではない。

 それにそのような立派な精神は持ち合わせていないし、彼女の成績を上げないといけなかった。

 正直、フローネの成績は最悪に等しい。

 数多くの優秀な家庭教師に勉強を見てもらっておきながら、何故このような成績なのか。これもやる気の問題だろうが、それ以前に覚える意欲が低い。

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