黄昏の真心
「では、戻ります」
「貴方の教え方は、難しいわ」
「そうでしょうか。昔から、このような教え方をしています。難しいと仰るのでしたら、簡単にしますが」
「そうね。お願い」
「検討してみます」
今でも十分に優しい教え方をしていた。それを更に簡単にしてほしいというのはかなり難しいことであったが、フローネに言われたからにはそのようにしないといけない。
教育方法の見直し――クラウスは、頭を悩ませる。
こうなると、十歳以下の教え方になってしまう。
一国の姫君、それも年齢は十六歳。そのような人物に、勉学をはじめたばかりの人物と同じ教育を行うとは――悲しくて、涙もこぼれない。
しかし、そのことを他人に相談することはできなかった。
一応、フローネの立場も考えないといけない。面子と立場を重んじなければ、仕え働く者達に不信感を抱かしてしまう。
王の娘は、成績が最低クラス。
これほど面白い噂話はないだろう。
娘の学力を上げてほしい。
クラウスは裏で、国王からそのように頼まれていた。
当初は信じられない内容だと軽く受け止めていたが、フローネに勉学を教えるようになってそれを認識した。
言葉の通り、彼女は知識に乏しい。
今まで、どのような教育をされてきたのか。そのように思ってしまうほど、悲しい現実が其処にあった。
だが、それはすぐに判明する。
それは、フローネの性格が大きな原因があったのだ。
要は、我儘すぎる。
または、我慢が効かない。
その為、気に入らない家庭教師を切ってきた。
これでは、勉学が進むわけがない。お陰で十六歳とは思えない知識の低さに、性格面も幼い。
国王が嘆く気持ちはわからないわけではなく、このままでは国が傾いてしまう。いや、その前に裏切りが生まれる。
これを少しずつ改善していかないといけないのだから、クラウスの責務は重い。
クラウスは、思った以上に我慢強い性格の持ち主。だからこそ、国王はフローネの家庭教師として選んだ。
その選択は、意外にも正しかった。このように、家庭教師を続けているのだから。
最近、本職の占いより副業の方を優先しないといけなくなってしまったが、これでいいのではないかと思いはじめてきている。
占いは、良い結果だけではない。中には勿論、悪い結果も存在しないことはない。特に最悪な結果を告げる時は、心が痛み遣る瀬無い気分に陥る。