黄昏の真心
数年前の天候悪化。クラウスの占いにより大事にはならなかったが、被害は尋常。もし占い結果がなければ、大勢の民が死んでいただろう。
この件から、クラウスの占い能力に多くの者が期待している。
しかし、違う意味で期待している人物が一人いる。その人物こそフローネで、無理難題を吹っ掛けてくる。
占い師だから、何でもできると思っているのか。
正直、クラウスはいい迷惑であった。クラウスはこの世界を統べる神ではないので、正直わからないことの方が多い。
「あら、可愛いわ」
「はい?」
「貴方の肩の上」
その言葉に促されるように、クラウスは自身の肩に視線を移した。
すると、一匹の蝶が飛び立つ。どうやら先程まで羽を休めていたのだろう、クラウスに気付かれた瞬間、新しい場所へ向かう。
「捕まえるべきでしたか?」
「貴方では、無理です」
「そうでしょうか?」
「優しいから」
「優しいですか」
いつもは我儘なことを言っているフローネとは思えない、真面目な台詞。思わず笑ってしまいそうになってしまうが、無表情のまま我慢をした。
此処で笑ってしまったら、愚痴を言われてしまうだろう。
流石にこのようなことが続いていたら、気の弱い人間なら倒れてしまう。
数多くの家庭教師が辞めていった理由――それはフローネが切ったのではなく、自ら辞めていったのだろう。
だが、日頃の行いが悪い影響を与え「フローネの我儘により」と、噂が広まった。
結局のところは、自業自得。このように優しい一面があろうとも、一部の人間にしかわかってもらえない。
悲しいといえばそうなるだろうが、それ以前に性格を治すことが先だろう。
「では、優しい僕が勉強を教えましょう。それで、よろしいですよね。これ以外、方法がありません」
「ええ、仕方がないわ」
「適切なご判断で」
諦めた形で、フローネはクラウスの言葉に従う。どのように足掻いたところで、勉強から逃れることはできない。
それに学べる時に学ばなければ、今後自分で自分の首を絞めてしまう。そのことが少しずつだが、わかってきたのだろう。嫌な素振りを見せるが、結局は従う。