雨のち晴れ【短編】
晴れだったり雨だったり
財布から落ちる一枚のプリクラ。
正確に言うと、何枚も落ちたんだけど。
私はある一枚のプリクラに釘付けになる。
幸せだったときの時雨くんとのたった一枚のプリクラ。
「お客様??」
「あっ、すみません!えっと、10円は~」
10円を差し出してプリクラを拾い集める。
不意にくる寂しさに思わず涙がこぼれそうになるけれど、それをグッと我慢する。
「レシートのお返しです。ありがとうございましたー」
ジュースやお菓子が入った袋片手に私は家に帰る。
お兄ちゃんのバカ。
思い出しちゃったじゃん、幸せだったときのこと。
パシリにしないでって帰ったら怒ろう。そう決意を固めてうつむきかけてた顔を無理矢理あげる。
だけど。
「はぁ。」
帰り道はため息ばっかりがこぼれた。
「ただーいまー!」
「はっちん、待ってました~!はい、どーも。お疲れさんー。はい、これお駄賃」
渡されたのは私の大好きなお菓子。
許すか……
「いーよー!じゃあ、私はピーコの散歩に行ってくる。」
ピーコは今年で5歳のゴールデンレトリバー。
おばさんちの子犬見に行ったとき、ピーコは兄弟の中で1番小さかった。
今は見る影なしだけど。
「ピーコ!散歩………寝てるわ。」
犬は散歩が大好きだというけれど、ピーコは三度の飯より、寝ることが大好き。
もちろん散歩より寝ること優先。
だから太るんだよ!
といつも思うけどピーコの寝顔のかわいさといったら、もう許せちゃうぐらい幸せそうだからとりあえず散歩は夕方にしようと思い、私はスマホをみる。
「えっ、もうこんな時間!!」
急いで着替えて、バックを持って走り気味に最寄りの駅に向かう。
今日は友達の梨紗(りさ)と待ち合わせして映画を見に行く。
「ピーコとか構ってる暇ないじゃない!」
走って、急いで電車に乗り、待ち合わせ場所に向かう。