雨のち晴れ【短編】
「関口さん。本当におれ?」
その返事…
もう…肯定じゃん。
「うん。そうだよ?」
「なんで俺?」
「え?だってかっこいいし、バスケしてる姿が可愛いし、紳士だから。」
バスケしてる姿。
私、見たことなかったな。
だってバスケ部は人気で。
だから体育館に詰めかける女子が多すぎて、体育館はしまっちゃってる。
クラスが一緒だとそんな特権があるんだな。
私の知らない先輩の姿。
「そっか…。」
「うん。付き合ってもらえる?」
髪を手で触りながら上目遣いで先輩を見上げる女の人。
か、かわいい。
なんで同じ女なのにこんなに違うの?
私ももっとかわいければ「関口さんのことは好きだよ。」
先輩。
辛いよ。
「やった「でもつき合えない。ごめん、好きだったんだ。でももっと好きな子ができちゃったんだ。いや、最初から関口さんのことはただ憧れているだけだったのかもしれない。その子は天然ドジなんだけど人のことをよく見てて、優しい子なんだ。」
「えっ?待って。私振られたの…??」
「うん、ごめんね。」
とたんに顔をゆがませる女の人。
「な、なに、それ?意味わかんない!私を振るとかマジでありえないんだけど。きもっ。バスケだってあんまりうまくないくせに。みんなに比べたらあなた下手くそじゃない!そんなあんたが粋がってんじゃないわよ!」
なによ…それ。
どういうこと?
信じられない。意味わかんない。
先輩がこれまで、どれだけ努力してきたか知らないくせに。
「うん、ごめんね。」
なんで先輩も謝ってるの?
いつだって先輩は優しすぎる。
相手のこと考えすぎてる。
「謝んないで!へたく「いい加減にしてくれませんか!?」
「は?だれ「先輩を侮辱しないで下さい!!どれだけ先輩が頑張ってきたか知ってますか!?どれだけ後輩のことを考えてきたか知ってますか!?どれだけ悩んできたか知ってますか!?一番最後まで練習してたのが誰だか知ってますか!?」
前にうちのクラスの男子が話してた。
練習終わっても何時間も残ってるって。
真似できねーよなーなんて話してた。
「きっも。誰なのよ?うざいっつーの。」
「私のことは言ってくれていいですけど。先輩のことは悪く言わないで!」
自分でもビックリした。
私ってこんな勇気あったっけ?
でもきっと、勇気がでてくるのは晴がいるからという晴への信頼感のおかげだと思う。
「後輩がしゃしゃってこないでもらえる?正義感ふりまわしてばっかみたい。」
というと女の人は手をふりあげた。
叩かれるって思ったけれど先輩がその手をつかんだ。
「さっきから聞いてれば言いたい放題言ってくれるね。俺の大切な彼女。傷つけないでもらえるかな?てか鏡見たら?その醜い顔。見られたもんじゃないね。」
こっ、こわっ!
てか「かっ、かっ、彼女ー!?」
ちなみに今のは私のではなく女の人の声。
「ありえない!なんでこんなウザいブスと?」
「え…?お前の方がよっぽど醜い顔してると思うよ?自分の顔をもっと恥じれば?」
なんか…
こんなこと言う人だったっけ?
「なっ「うざい。消えてくれない?」
その言葉とともに暴言を吐きながら逃げていく女の人。
なんだか力が抜けてヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「ちょ、梨沙ちゃん、大丈夫!?ごめん、怖かったよね。あの女。」
確かにあの女の人もですが…
「先輩。一個聞いてもいいですか?」
そう。ずっと聞きたかった。