雨のち晴れ【短編】
「うぅー。ひっく。ひっく。」
映画を見終わってざわざわし出す映画館。
泣いているのは私の隣にいる梨紗だけ。
「梨紗、感動しすぎだから。どんだけ泣いてんのよ。」
「だってぇー。あり得ないでしょ!?なんで、理彩は陽太と付き合っちゃうわけ!?そこは、紳くんでしょぉぉぉ!!ひっく。うぅー。」
確かにビックリした。
これ、完全にハッピーエンドじゃないよね?
ま、私の恋愛も同じか。
「うぅー。」
「いい加減、泣き止みなさいよね。泣いたって終わりは変わらないんだから。ハッピーエンドは泣いたって訪れないよ?」
「そうっかもだけどぉー。ひっく。悲しいじゃん!ひっく。うぅー。もーなんてことなのよぉ私の紳くんがぁぁぁぁ。」
「もう、叫ばないでよ。恥ずかしいでしょー?ほら、ご飯食べようよ!お腹空いたよ。」
「うぅ。ひっく。うん。」
私たちの行きつけのイタリアンのお店に入る。
その頃にはもう理彩もにこにこしていた。
「ピザと~このパスタと~このシーザーサラダと~季節のアイスと~あと、飲み物はコーラください!」
どっ、どんだけ頼むの!?
って、お店の人思ったかもしれないけど食いしん坊の梨紗には少ないぐらいだ。
「私は和風パスタとアップルパイとジンジャエールください。」
かしこまりました。と頭を下げて歩いていく店員さん。
「今の人!かわいかったね!」
「ん?そうだね。」
どこがで見たことあるような……
まぁあんな美人なら忘れないよね?
「僕のシンデレラ最悪!もう見なければよかったし!なんなのよ、あれ!信じらんないんだけど!!」
悲しみを怒りに変えて怒り出す梨紗。
「そぉ?なかなか面白かったじゃん。恋愛だって絶対うまくいくとは限らないんだし。」
「そんなことわかってるよ!!だからこそ、映画やドラマでは非現実的であってほしいんじゃんかー!なのにさー!」
なるほど。
そういうものなのかー。
「なるほ「わー、ジュース来たよ!乾杯しよ、乾杯!」
若干言葉を遮られたけどまぁいっか。
「「乾杯!」」
「ねー、聞いてよ!この前ね~!」
いつもの片思いトークに花を咲かせる私たち。
といっても梨紗の話を聞くだけなんだけど。
梨紗は一個先輩で三年生のバスケ部の副キャプテンの桐ヶ谷颯人先輩ことが好き。
告白は怖くてまだできないんだって。
梨紗なら大丈夫だと思うんだけどねー
というのも、梨紗はすごく可愛いから。
なんか小動物系な感じで、性格も人なつっこいからもうモテまくる。
でも、それを鼻にかけたりしないで謙虚な梨紗が私は大好き。
時雨くんのことだって本当はいろいろ聞きたいはずなのに何も聞いてこない。
きっと私から話すのを待ってる。
でも、ごめん、梨紗。
私にはまだ時間が必要。
あの日のことを笑って話せるほど私はまだ強くない。
でもきっといつか話すから。
それまで、待っててほしい…
「って、聞いてるー?おーい!晴ー?」
「ふふっ、話しかけてくれたんだ?」
「そーなの!ちょーうれしかったー!」
恋する乙女って感じの顔をしながら照れたように笑う梨紗は本当に可愛い。
まったく、桐ヶ谷先輩がうらやましい!
「いい感じじゃん!!」
「えー?そうかなぁ?」
笑いながらちゅーっと音を立ててジュースを飲む姿はきっと男子が見たら惚れちゃうと思う。