雨のち晴れ【短編】
「おいしかったぁー♪♪めっちゃ食ったね~!もうあのピザうますぎ!!」
ピザのおかわりをした梨紗はご機嫌。
「おいしかったねー!次、ど………」
梨紗のほうを振り向くと店の前に人影が見える
なぜ私が黙っているかというと、
店の前にいたのは時雨くんだったから。
「晴ー?どした??おーい??誰かいるの?知り合いでも………って、時雨くん!?!?」
私の顔の前で手をひらひらさせてから振り向く梨紗。
「…時雨くん…だね。誰かと来てたんじゃないの??私には…関係ないし。ほら、どっか行こうよ…」
「晴…。そうだ「ごめん、しぃくん!遅れちゃったぁ♡ねね、映画見に行こぉー?」
店から出てきたのはさっきの店員さん。
美人だなぁ。
なんだ、時雨くん彼女いるんじゃん。
まだつき合ってるのかもなんて思ってた自分がアホらしい。
2人ならぶとお似合い…だ。
「晴…大丈「大丈夫!大丈夫!時雨くん彼女さんいたんだね~!はははっ!美人だね!」
「いや、妹さんとかかもよ?」
「彼女さんでしょ~!あきらかに!別に私は大丈夫だから!心配しないで?でも…もう、帰ってもいいかなぁー?ごめん、梨紗。明日はいつも通りの私に戻ってるから。ごめん!」
駅に向かって走り出す。
ばっかみたい。
ばっかみたい。
なに期待してたんだろう。
私はとっくに振られてたのに。
だけど…辛いなぁ。
好きだったんだもん。
大好きだったんだもん。
時雨くんのバカ。
こんなに好きにさせといて!
簡単に別れないでよ!
いつだって、主人公がうまくいくなんて限らないんだから。
というか、最初から私は主人公なんかじゃないんだよ。
主人公の嫌な敵。
そんな立ち位置なんだよね。
「な…かない。泣きたくなんかないっ。」
歯を食いしばって涙を抑える。
駅に着いて、電車に乗って、最寄りの駅について、とぼとぼと家に帰る。
「はっちゃん、おかえり…って、どうした!?なんかあったか!?梨紗ちゃんと喧嘩でもしたのか!?」
お兄ちゃんの驚いた顔に少し困ったように笑い返して、部屋に行く。
「おい?晴!?」
晴って呼ばれたの久しぶりだ。
「うぅーーー。ひっく。ひっく。しっ、ぐれくんのばかぁぁ。ひっく。うぅー。」
ベッドにうつ伏せになりボロボロと涙を流す。
幸せなお似合いのカップル。
「なっんでよぉー。ひっく。なんで??」
一度でた涙は留まることを知らない。
私はずっと泣き、そして、泣き疲れて眠った。