雨のち晴れ【短編】
「どうりで見たことあると思った…。」
「あの、さっきの返事?俺も、まだ好きっていうか、なんか俺って言葉にすんのが苦手だから晴のこと…傷つけちゃったりすんのかもだけど俺、晴のこと好きで、本当は俺好きな人って晴に会うまでいなかったんだ。つまり、晴が初恋
って感じか。だからいろいろ考えて、晴もあんまり話すタイプじゃなかったから心配になったりして、だってお前美人だし。」
「初めて…言われたよ。そんな嬉しいこと。」
スッと涙が落ちる。
「私も、初恋で。だから、どうしたらいいのか全然わかんなくて。素直になれなくて。一緒にいたいって言えなくて。いつもどこか不安になっちゃって。なんか、なんかっ、ごめんねっ。ちゃんと向き合えなくてごめん。」
ポロポロ涙が出てきて、止められなかった。
「晴。俺らやり直せる??」
「時雨くん……。ありがとう。私もやり直したいって思うよ。これから素直になるし、一緒にいたいって言うよ。でも今よりずっとワガママになっちゃうよ。ねぇそれでもいい?」
不安そうに見ると時雨くんは笑いながら
「いいよ。ワガママで。じゃ、俺も一個ワガママ言ってもいい?」
と言った。
「えっ?なに、なに??」
「………よんで。」
「え??も、一回言っ「時雨って呼んで。」
ポカーンとしてしまう私。
「ふふっ、あははははっ。いいよ。時雨!」
「っ!笑うなっつーの。」
「照れ…てる??ねぇ、何回でも呼ぶよ、時雨って。だからずっと側にいてくれる?」
照れてる時雨……の背中に回り込んで顔を覗き込む。
すると時雨は急に私をぎゅっと抱きしめてきた。
「わっ、ちょっ、時雨く「時雨だろ?もう、晴は可愛すぎ。本当可愛すぎるんだよ。」
トクントクン。
あ、時雨……鼓動はやくなってる。
でもきっと私も…
「晴、鼓動はやくなってるな。」
「しっ、時雨こそっ」
「あ、バレた?」
おでこをこつんとぶつけ、笑いあう私たち。
あ……って思った。
もうダメだって思った。
だって、私はもっと君を好きになる。
「…んっ。」
重なる2人の影。
「晴、可愛い。」
「時雨…こそ、顔赤いもん。」
似たものどうし。
笑ったり、泣いたり。
晴れたり、雨になったり。
そうやって毎日過ぎていく日々の中で思い出ばっかりが積み重なっていく。
どんどん惹かれていく。
どんどんどんどん好きになる。
笑ってたって、泣いてたって。
晴れてたって、雨降ってたって。
あなたが隣にいれば、私は幸せだから。