俺様常務とシンデレラ
Kiss me befor I wake.
「え? 今、なんて言いました?」
なんだかとんでもない冗談を聞いたような気がする。
ううん、まさかね。
この王子様のようにイケメンで優しい常務が、突然そんなこと言うわけない。
「こんなこと2回も言わせないでくれよ。きみのことは、今日限りでクビにしようと思う」
「あっ、ですよね! そういう冗談って2回言うの恥ずかしいですよね、ごめんなさい!」
「いや、そうじゃなくて……」
常務ってユーモアもある人なんだ!
何から何まで完璧な自分のボスに、ついニンマリしちゃう。
私は常務の新しい一面を発見したことにニヤニヤしながら、足元に散らばった資料を拾い集める。
ちょっとね、手が滑って落としちゃったの。
そしたら常務がいきなり『クビにする』なんて冗談を仰るから、とっさに反応できなかった。
「おい、顔を上げてよく聞け」
床にしゃがみ込む私の視線の先に、隅々まで磨かれた焦げ茶色の革靴が映り込んで、頭の上から恐ろしく低い声が降ってきた。
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