俺様常務とシンデレラ
少し拗ねたような口振りに、私はギョッとして常務を見上げた。
「ご、誤解です! 私が好きなのは意地悪な方の常務です!」
私が勢い良くそう言うと、常務は少しの間きょとんとして、それからクスクスと上機嫌に笑い出した。
「そうか、それは嬉しいな。朝が来るまで、お前の声が枯れるほど意地悪してやるよ」
はっ!
違う! 間違えた!
私は誤解を解こうとして更なるとんでもない誤解を招いてしまったことに気付き、慌てて訂正しようと口を開く。
だけど、もう手遅れだった。
「んっ……」
常務は噛み付くように唇を重ね、熱い舌で、宣言通り意地悪に私を翻弄する。
捕まえては、離し、私の中にたっぷりとくすぶる火種を植え付ける。
そうして焦らしながら私を巧みに連れ出して、彼の中へ誘い込んだ。
常務の左手は私の右手を握り、ふたりの指先をしっかりと絡ませる。
左手でドレスの上からウエストラインをなでながら、少しずつ群青色のドレスを私から剥がしていった。
胸を包む手のひらや、身体中に触れる唇や、内腿に触れた常務の黒髪。
その全てが私の体温を上げていき、ふわふわとした感覚を限界まで膨れ上がらせる。