俺様常務とシンデレラ

「あっ……じょーむ、もう……」


私がはらはらと涙を流しながら降参を告げると、常務は身体を起こして私の左脚を抱え上げる。

そして足首でゆらゆらと揺れるアンクレットについた、小さなリボンのモチーフに、満足気にくちづけをした。


ドキドキと高鳴る私の胸は、なぜかその仕草に、一層きゅーっと苦しいほどに締め付けられる。


「本当の俺が好きなら、名前を呼べよ」


常務は指先で私を焦らしながらそう言い放ち、余裕の表情で不敵に笑う。


「もっ……いじわる……!」

「それが好きなくせに」


常務はクスクスと笑ってゆっくりと覆いかぶさり、私の唇をいたずらにペロリと舐めた。


私の身体にはもう完全に常務の毒が回り、我慢が利かない。



「大和、さん……」

「ん」



常務はご満悦の表情で頷き、私と両手をしっかりと繋ぎ合わせ、深く深くキスをする。


「俺が見せてやるよ」


おとぎ話よりも、もっともっと、素敵な夢。

憧れた王子様よりも、もっともっと、夢中になれる人。


常務のキスで覚めた、長い長い夢は、また同じように、この人のキスではじまる。

今度はもっと確かで、リアルで、どこまでも私を溺れされる夢だ。
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