俺様常務とシンデレラ
spell3: Crazy for you!
迷子のシンデレラ
「お前は何をやってんだよ」
「きゃあ!」
ひとりきりの朝の秘書室。
突然後ろから声をかけられて、私は飛び上がって勢い良く振り返った。
「じょ、常務! おはようございます!」
「ああ。で? なんでお前のデスクにはこんなに落書きがしてあるんだ?」
「あー、ははは」
「誤魔化すな、アホ」
常務は秘書室にふたりきりなのをいいことに、私の頬を摘まんでびよーんと引っ張る。
私は観念して、背中に隠した布巾を掲げて白状した。
「先日、電話を取ったとき、ちょうど! たまたま! 偶然! メモが見当たらなかったもので……」
「それでデスクに直接メモしたのか? しかもマジックペンで?」
私は自分のデスクに黒いマジックペンで書かれたメモをチラリと見て、へへへと笑って頷いた。
常務は心底呆れたような眼差しでジロリと私を見下ろした。
「相変わらずのへっぽこぶりだな」
「あー、えーっと、常務はどうしてこちらへ?」
私はデスクの上のメモを常務の視線から隠すように、その上に資料をドサドサと重ねた。
役員がこんな朝早くに秘書室に現れるなんて、かなり珍しい。