俺様常務とシンデレラ
会って、あの意地悪な表情を見せて欲しい。
無防備な彼を見せて、安心させて欲しい。
常務は、なにか、ムリをしているわけじゃないよね……?
私の心はゆらゆらと不安に揺られ、迷子のように彷徨っていた。
そのとき、バックの中で携帯が着信を告げるのを聞いた。
はっ!
そう言えば、会議が終わったら連絡くれるって言ってた!
きっと、常務からだ!
慌ててバックの中をがさごそと漁り、携帯を引っ掴んで、相手の確認もそこそこにすぐに電話に出る。
「うえーん! じょーむー!」
《……なんだお前、なんでいきなり半泣きなんだよ》
電話の相手はやっぱり常務で、私の勢いにちょっと引きつつも、その口調とは裏腹に、いつもより優しい声だった。
《ちゃんと家に着いたか?》
「もうちょっとです、今ちょうど、電車降りたところで……」
私はグズグズと鼻を啜りながら、たった今聞きたくてたまらなかった、大好きな常務の声を耳元にぎゅーっと押し付けた。