俺様常務とシンデレラ
「そ、そうなんですか……」
なるほど……。
そういえば、いつだったか、夏目さんが言っていた。
『常務は裏表が激しいというより、心を許せる人が極端に少ないんだ』って。
そしてそれは、葦原家のひとり息子としての責任を感じていたからだって。
《あとはまあ、そのほうが便利だってのもある。とくに女性は、そっちのほうが喜ぶしな。"王子様"好きな誰かさんみたいに》
「あっ、うっ……そ、それは……」
それは違います!と、すぐに反論したいところだけど、実際に常務の本性を知る前は舞い上がっていたわけだから、否定しにくい。
あわあわと慌てる私の気配を察したのか、常務が電話の向こうでクスクスと笑っている。
飾らない、素の常務の笑い声。
私をからかって、笑ってる。
まったく、意地悪だなあ……。
だけど仕方ない。
私はそういう常務を、好きになってしまったんだ。
「あの、常務……」