俺様常務とシンデレラ
私はその女の子と並んで、公園内の小さなブランコに乗り、街が夜の闇に吸い込まれていくのを見ていた。
彼女は、近くのお嬢様学校の中等部に通う、中学2年生らしい。
名前はエレナちゃん。
亜麻色の巻き毛に少し緑掛かった大きな瞳と、長くてくるんとしたまつ毛。
フランス人形みたいな容姿のエレナちゃんは、お母さんがノルウェーの出身なんだとか。
あまりに人目を引くその容姿のせいで、友だちや先生から、心無い言葉を浴びせられることもあった。
だけどそんな中、彼女のことを初めから偏見なしに見てくれたのが、さっきの彼だったんだって。
「彼、言ってくれたんです。エレナの髪はすごく綺麗だね、って。あんな風に、まっすぐに私を見て言ってくれたのは、彼だけだった。だから、彼のことは信じられるような気がしたんです」
「そっかあ……」
私たちはギコギコとブランコを揺らしながら、ぽつぽつと気の向くままに話をした。
エレナちゃんのお母さんが、祖国であるノルウェーで、ある男の人と運命的な出会いをしたこと。
その男性と恋に落ちて、日本まで追いかけて来たこと。
ふたりの間に、エレナちゃんが生まれたこと。
だからエレナちゃんも、いつかは、運命の相手と恋に落ちることを夢に見てるんだということ。