俺様常務とシンデレラ
「でも、間違ってたってことですよね。彼じゃなかった……」
エレナちゃんは暗くなった空を見上げて、ぽつーんと寂し気に呟いた。
彼女は初めこそ言葉に詰まったり、涙目になったりすることがあったけど、今はもう落ち着いている。
強くて綺麗で、とっても良い子なんだろうなあと思った。
「絵未さんは、恋人がいらっしゃるの? 彼のことを、運命の相手だと思ってる?」
「えー? 私?」
うーん、どうだろう……。
常務とは、お互いに『好き』だと言いあって、心も身体も繋がり合って、恋人と呼べる関係のはずだ。
『付き合いましょう』みたいなことは、言ってないけど……。
だけど常務はたぶん、"運命"とか信じてないだろうし。
それに私、王子様の常務じゃなくて、意地悪な常務に恋したんだし。
本当の常務を好きでいたいって、思ってるしなあ……。
私が首を傾げてしばらく唸っていると、エレナちゃんは悲しい顔で俯き、随分と沈んだ声で呟いた。
「……やっぱり、いないのでしょうか。"運命の相手"なんて、都合のいい幻想なんですかね……」
そのときのブランコに揺られるエレナちゃんは、夜の黒さに吸い込まれそうなほど弱々しく見えた。