俺様常務とシンデレラ

「あ……ちょっと、ごめんね」


エレナちゃんに断ってバックの中から携帯を取り出し、相手を確認する。

その予想外の相手に驚いて、携帯を落としそうになってしまった。


「えっ! ウソ、常務!?」


さっき電話切ったばっかりなのに!

常務は電話やメールをまめにする人ではないし、そもそも、電話が掛かってくること自体珍しい。


1日に2回なんて、レアだ。

激レアだよ。


「もっ、もしもし!」


私はちょっとドキドキする胸を押さえて、上ずる声で電話に出た。


《ああ、悪い。お前のアパートって、お前が俺の背中にぶつかってズッコケた駅の近くだろ?》

「え、そ、そうですけど……」


"ズッコケた"って、何かもっと別の言い方にしてくれればいいのに。

"はじめて出会った夜"とかって言ってくれればロマンチックなのになあ。

まあ、常務にロマンチックは期待できないか。


私が心の中でこっそり酷いことを呟いていると、電話の向こうの常務は、突然思ってもみなかった言葉で、不意打ちを仕掛けてきた。
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