俺様常務とシンデレラ
《ちょっと顔見せろよ。お前に会いたいと思って、駅まで来てるから》
「え……?」
わ、私に会いたい……?
いやいや、いかんよ絵未ちゃん。
常務がそんな可愛いこと言うわけないよ、たぶん何か用事があるんだ。
私はドキドキと期待に舞い上がろうとする胸を押さえ付けて、常務が私に会いに来なくてはいけないような理由を探した。
「あ、あの、報告書に不備でも……?」
《はあ? あれは明日の朝にでも目を通す。あんまり遅くに来られたらお前も困るだろ》
「……そ、それって……」
私はもう膨れ上がる胸のドキドキを抑えきれず、声に期待が混じるのを止められない。
《……なんだよ。別に、お前に会いに行くことに理由なんかいらないだろ》
ちょっとぶっきらぼうに言う常務に、私の胸はついに鎖を解かれて、嬉しさにぴゆーんと舞い上がった!
はうぅー!
なにそれ! 不意打ち!
でも嬉しいーーー!
「常務、大好き! 今すぐ行きますっ!」
私は弾む声でそう言って電話を切り、エレナちゃんを駅まで送ってから、近くで私を待っている常務のところへウキウキしながら駆けて行った。