俺様常務とシンデレラ
肩で息をする私のことを、常務はぎゅーっときつく抱き締める。
なんだかよくわからないけど、すっぽりと包まれた私は、ホッとしてその胸に顔を埋めた。
「……悪い、こんなガキみたいに盛って。でもお前が電話で散々煽るから、抑え利かなかった」
常務の声が首筋に触れ、私はぶるりと身震いする。
それから常務は少し身体を離して、拗ねたような瞳で私を見下ろした。
「お前、俺を部屋に入れた時点でいろいろ覚悟しろよ」
「へ?」
常務は私の手を引き、短い廊下の先にある小さな部屋のドアを開けた。
わ、私の部屋なのに、エスコートされてしまっている……。
常務は部屋をぐるりと見回し、ドアの横にあった電気のスイッチを入れた。
白い明るさに目を細める。
私の部屋は八畳一間の小さな部屋で、壁には本棚とパソコン用のデスクが置かれ、部屋の真ん中にはローテーブルがある。
19型のテレビは薄いピンク色で、一人暮らしをはじめるときに買ったものだ。
ドアを開けた私たちの目に飛び込んでくるのは、部屋の奥に置かれたベッドと、バルコニーへと続く大きな窓を覆う、白いカーテンだった。