俺様常務とシンデレラ

汗ばんだ肌、上がる息。

むせかえるほど甘く濃厚な空気。

ときどき触れる常務の胸から、私と同じリズムを刻む鼓動が聞こえてくると、ずっと奥の方がきゅんと高鳴る。


「んあっ……常務……」


熱に浮かされ、震える声で彼を呼べば、叱るように鼻先をかぷりと食べられた。


「なあ、いい加減、ふたりきりのときは名前で呼べよ」

「むっ……でも、常務だっていつも私のこと、お前とか……」

「あ?」


常務は不満そうな声を上げて、私をいたぶる手を一旦止める。

むんっ……。

そんな顔したって、私だって、そう簡単には思い通りになってあげないゾ。


「私だって、まだ一回しか呼んでもらってないですよ」


常務に負けず、私も唇を尖らせて彼を見上げると、眉を寄せた常務はふいっと視線を逸らした。

そして聞こえた微かな音。


「チッ……」


えっ! 舌打ち!?

なんですか、その『バレたか……』みたいな顔!

まさか自分だけごまかせるとでも思ってたの!?


驚愕の表情で見上げていると、常務は拗ねた瞳を私に向け、私の鼻の先をきゅっと摘まんだ。
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