俺様常務とシンデレラ

「あの、それは、さっき……」


私は身体を起こしてシーツを巻きつけ、おずおずと話し始めた。

常務が何にショックを受けて、何を聞きたいのかがよくわからない。

だから常務に出会った日の前の夜に見た夢のことから、エレナちゃんに会って、あれを手放そうと思ったことまでを順番に説明した。


常務は初めこそ取り乱して困惑した様子だったけど、私の話を聞くうちに少しずついつもの彼に戻っていった。



「だから私、私だけは、ずっと本当の常務を見つめていられるようにって……。あのアンクレットを手放したのは、いつか迎えに来てくれる憧れの"王子様"とは、もうお別れしようって思ったからで……」


常務が落ち着くのに反比例して、なんだか私の方が混乱してしまう。


私はなにか、いけないことをしてしまったんだろうか。

だってあれは、小さい頃から引き出しの中にしまってあった、お母さんのアンクレットのはずなのに……。


私がわけもわからずジワジワと涙目になると、それに気付いた常務が優しく抱き寄せて髪をなでてくれた。


「悪い、驚かせたな。なんでもないんだ。俺もあれ気に入ってたから、ちょっと驚いただけだ」


私はパタパタと瞬きをして、なんとか涙を散らそうとする。

常務は私の両頬を包んで上を向かせると、目の端に丁寧にキスを落とした。
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