俺様常務とシンデレラ
魔法が解ける
それから2日後の午前中。
私は夏目さんに呼ばれ、秘書室から会長室へと続く廊下を歩いていた。
ど、どうしよう……。
会長室に呼び出しなんて初めてだ。
葦原会長とは入社時のあいさつ以来、ほとんどお話できていない。
帝国葦原館で行われたパーティーのときですら、お忙しい様子の会長にはあいさつもままならなかったのに。
「あの、私はどうして会長に呼ばれたのでしょうか……?」
私はカチコチになりながら、数歩前を颯爽と歩く夏目さんに恐る恐る聞いてみた。
「そうですねえ……。まあ中に入っていただけばわかると思いますが、心の準備も必要でしょう」
夏目さんは会長室の重厚なドアの少し手前で立ち止まり、私と向き合った。
仕事中のおちゃらけていない夏目さんは、堀の深い目元にさらに厳しい印象が重なり、ちょっと近寄りがたい。
うぅ、なんだろう。
なんだか本物の刑事さんに連行される気分だよ……。
「中にはすでに常務が居られます。先日アジュールで東堂社長と打ち合わせをされましたよね? その件で、常務と東堂社長の間に食い違いがあったのです」