俺様常務とシンデレラ
「え……?」
食い違い?
どうしよう、それって、私が常務の代理として行った打ち合わせのことだよね?
「まあ、今回のことはいろいろと悪いことが重なってしまった故のトラブルですがね。東堂社長と常務はもともと、お互いにあまり印象が良くありませんから」
トラブル……。
どうやら、この先の部屋で私を待っているのは、到底良い話ではないみたい。
心臓がイヤな音をたてはじめ、肌にヒヤリと冷たいものを押し付けられたように寒気がする。
「あなたも常務も、まだお若いですから。ほんの少し叱咤激励を浴びるものだと思ってください。まあ、詳しいことは、会長からお話がありますよ」
夏目さんはわずかに目元を緩めて、私を慰めるように笑ってくれた。
でも……全然、気休めにならない!
「準備はいいですか?」と言って、会長室のドアの前に立つ夏目さん。
同情しているようにも、憐れんでいるようにも見える、なんとも言えない表情だ。
ふえーん! どうしよう!
いつものおっちょこちょいなら、常務か夏目さんに、子どもをしつけるみたいな怒られ方をして終わりだったのに。
私、ついに、とんでもないことをやらかしてしまったんだろうか……!?
私は極度の緊張でめまいを感じながら、夏目さんに導かれて会長室へと足を踏み入れた。