俺様常務とシンデレラ
その集団の側まで来ると、男の子たちの声がはっきりと聞こえてきて、ひとりひとりの雰囲気や顔立ちもわかるようになってきた。
男の子たちは、こういうことに慣れているみたいで、軽いノリで話しかけている。
でもガン無視されてる。
これなら、私が邪魔に入ればすぐに他を探しに行くかもしれない。
「あのぉ……小鞠ちゃん。こんなとこでなにしてるの?」
私がおずおずと声を上げると、10個以上の目が一気にこちらを向いた。
あわわ。
なんかみんな、目がキラキラしてる。
「やっと来た。あなたがここを通るんじゃないかと思って、待ってたの」
「え? 私?」
その中でも特別魅力的な黒い瞳をもった小鞠ちゃんは、心底待ちくたびれたという表情で私を見た。
確かにこんなところにひとりで立って、何をしてるんだろうと思ったけど、あまりに予想外の答えに目が点になる。
「私、この人待ってただけだから。もういいよ」
ん?
"もういいよ"?
小鞠ちゃんは腕を組んで顎をツンと上げ、ナンパしてきていた男の子たちに向かってそう言い放った。
すると彼らはその言葉を合図に、わらわらと背中を向けて散りはじめる。
「またいつでも声かけてね〜」
「ええー! 俺、あのおねーさんのほうがタイプ! 遊びたい!」
「お前ほんと年上好きだよな」