俺様常務とシンデレラ
小鞠ちゃんに解散命令を出された男の子たちは、わいわいと騒ぎながらもあっさりと雑踏の中に溶け込んでいく。
「えーっと、あの人たちは?」
彼らの背中が完全に人の波に飲み込まれるのを見届けてから、少し呆気に取られながら小鞠ちゃんに聞くと、彼女はごく当然のことと言うようにサラリと言った。
「ここにいると男の人が寄ってきてうるさかったから、ちょっと立っててもらっただけ」
ちょっと、立っててもらっただけ……。
な、なるほど。
その尊大な物言いに若干理久さんの影を感じなくもないけれど、私はなんだか妙に納得してしまった。
やっぱり小鞠ちゃんって、ちょっとツンとして見えるのに、誰に対しても保護欲を誘うような魅力がある。
だってあの男の子たちも、全然迷惑そうじゃなかったし。
私がまたもや小鞠ちゃんの放つオーラに圧倒されていると、彼女は私の全身にさっと視線を巡らせた。
はじめは足元をジッと見つめてから、スッと目線を上げて、私の顔のあたりを見たときはなんだか苦い顔をする。
うっ……。
な、なんだろう……?
小鞠ちゃんの美少女っぷりに比べたら、私なんて相当ちんちくりんに見えるんだろうな……。
「アンクレットはどうしたんですか?」
私が勝手に卑屈な思考に陥って落胆していると、小鞠ちゃんは気持ちいいほどまっすぐに、なんの含みもなさそうな声でそう言った。