俺様常務とシンデレラ
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それから1週間が過ぎ、梅雨も開けた頃。
バイト先である『ラーメン猫丸』に、妙に身キレイな見慣れないお客さんが現れた。
カラリと気持ちよく晴れた夏日。
お昼時にはフラリと立ち寄るお客さんも多く、狭い店内とはいえ、店長と私だけでは猫の手も借りたいほどの忙しさだった。
ちなみに、店長はお店で真っ白いふてぶてしい猫を飼っている。
名前は『マル』。
丸々とした、体格のいい猫だから。
そのお客さんが『猫丸』に現れたのは、お昼時の混雑が落ち着き、丁度店内には私と店長とマルだけになったとき。
ダークグレーのスーツを着たその人が暖簾をくぐっても、店長は調理場から動こうとせず、店先で寝ていたマルは片目を開けてチラリと見てからまたすぐに昼寝を始めた。
その男性は短めの黒い髪で、日本人にしては堀の深い目元と、一際高い鼻が目を引く。
健康的なオリーブ色の肌をしていて、若々しく見え、見た目からは年齢が推測しにくい人だった。
20代……
では、ないか。
30代半ばか、もしかしたらもう少し上かもしれない。