俺様常務とシンデレラ
私は小鞠ちゃんの背中が溶け込んだ人混みを、しばらくぼーっと見ていた。
霧がかかったようだった視界が、みるみるうちに開けていく。
私だけの、たったひとりの王子様。
そうだった。
私はそれを探していたんだ。
どうしてこんなにごちゃごちゃと悩んだりしたんだろう……。
常務だけが、たったひとりの私の大好きな人なんだ。
たとえ常務が私に心を閉ざすことがあっても、ふたりの間の"運命"を信じていなかったとしても、私は本当の常務をまっすぐに好きでいたい。
ずっと、ずっと、常務にドキドキしていたい。
夢を見ることは、恋をすることだ。
もやもやと心に巣食う雲が弾けて消えていく。
目が覚めたようにクリアになっていく世界が、白くキラキラと鮮明な光を帯びて輝いているように見える。
そのとき、ぱちぱちと瞬きをする私の視界の隅で、本当に白いものがもぞもぞと動いた。
うっ……!
目が変になったかも。
街を行く人の足元に白くてまるまるとしたものが見える……!
私は一度ぎゅーっと目をつぶって、パッと開いてみた。
や、やっぱりいる!
なんか白いものが動いてる!