俺様常務とシンデレラ
「い、いえ! まだ常務のところでがんばってます」
最近はちょっと、気まずい感じになっちゃってるけど……。
でもそれも今日で終わりだ!
次に会うときは、私はこれまで通り普通に接するんだ。
何度あなたが壁の向こう側に隠れようとも、私だけは、本当のあなたを見つめている。
逃げようとしたって、そう簡単にはいかないゾ。
私、本当の常務が大好きだもん。
「そうかそうか、そういえば最近、仕事でうちの息子に会ったみたいだね。あいつ捻くれ者だよねえ、誰に似たんだか」
東堂会長は大きな身体を揺すってムホホと笑う。
……うーん、でも、厳しそうな雰囲気とか、精悍な顔付きとか、お若い頃の痩せてる会長とクリソツでしたけど……。
あの性格ももしかしたら会長譲りなのではと思ったけど、ここはぐっと飲み込んで深呼吸をする。
「あの、東堂会長。そのことで、会長にお願いがあるんですけど……」
「ん? なんだい?」
私がおずおずと上目遣いに様子を窺うと、会長は人の好い顔でにっこりと微笑んでお猪口を置いた。
私は、ふたりきりのときにだけ見せてくれる、無防備な常務のことが大好きだ。