俺様常務とシンデレラ
だけど、だからこそ、葦原ホールディングスの取締役常務として、葦原家のひとり息子として、人前に立つ常務を支えてあげたい。
常務が気を許せる相手であり、信頼できる相手でありたい。
そしていつか、本当の彼をみんなが好きになってくれるように、誰よりも近くで彼を愛し続けたい!
私はカウンターの椅子からピョンッ飛び下りて、背筋をまっすぐに伸ばしてからガバッと頭を下げた。
「私を、息子さんに……理久さんに、会わせてください!!」
多くを背負う常務の秘書として、胸を張って彼の隣に立てるように。
いつか葦原家の当主として、葦原ホールディングスのトップに立つ常務を、どんなときでも決してひとりにはしないように。
私は今の私にできることを、精一杯やってみせる!
「ふむ」
人が少ないのをいいことに、大きな声で叫んだ私のせいで、しーんと静まり返った店内。
その沈黙の中に、静かな声が落とされる。
恐る恐る顔を上げると、東堂会長は目元を緩めて優しく笑っていた。
「いいだろう。葦原ホールディングス取締役常務の秘書である佐倉さんを、我が東堂家本邸にご招待しよう」
そして会長はたっぷりとお肉の付いた自分のお腹を、満足そうにぽよんっと叩いた。