俺様常務とシンデレラ
王様にお願い
「あ、あの、いきなり入っていいんですか? いや、よくないですよね? いきなりはマズいですよね?」
「えぇー、だって絵未ちゃんが理久に会いたいって言ったんだよ」
シンと静まる廊下で、立派な両開きのドアの前に立ち、コソコソと話す私と東堂会長。
会長はぶーぶーと唇を尖らせているけど……。
『えぇー』じゃないよ、まったく!
普通、応接室とかどこか適当なところで会うでしょうが!
むしろここじゃないなら玄関先でもなんでも全然気にしないから!
『ラーメン猫丸』から東堂家本邸へやって来た私は、会長に連れられて立派なお家のやけに奥の方まで進み、このドアの前に立たされた。
ノックしようとする会長を一応止めて確認してみたところ、なんとここは理久さんの個人部屋だった!
「大丈夫、理久は絵未ちゃんのこと、嫌いじゃないと思うよ」
「嫌いです。絶対嫌いですよ、あの人」
私が真顔でそっこう否定てしも、会長は笑うばかりで取り合ってくれない。
「大和くんには悪いけど、私も絵未ちゃんがお気に入りなんだよ。うちの嫁に欲しいくらいにね」
東堂会長はいたずらっぽく笑ってウインクをし、遂にそのドアをノックした。