俺様常務とシンデレラ
「何の用だ? 珍しいな、こんな時間に」
理久さんはお父さんに対してもいつもこんな尊大な物言いをするみたいで、ソファに座って本を読み、左肘を肘掛についたままこちらを見ずに言った。
お、王様みたいだ……!
この部屋も、その立ち居振る舞いも、あの態度も全部、王様みたいな人だ!
ドアがバタンと閉まる音がして、それでも私が黙ったままでいたから、さすがに不審に思ったのか理久さんが眉をひそめて振り向く。
そして切れ長の鋭い瞳を、これ以上ないほどまん丸にした。
「お前……! どっから入って来やがった、この小娘!」
ひえー!
いきなり小娘扱い!
理久さんは本当に驚いたみたいで、ソファから立ち上がり、こちらを凝視したまま立っている。
私はもうすでに逃げ帰りたい気分になったけど、なんとかその場に踏ん張った。
「あ、あの、東堂会長に、ここまで連れて来ていただいて……」
「はあ? なんで親父がお前を連れて来るんだよ。この家までどうやって来た」
「あー、えーっと、その……」
このお家まで、東堂会長に案内してもらったんだけどなあ。
でもそのことを説明するには、私が『ラーメン猫丸』でアルバイトをしていたことや、東堂会長がそこの常連さんであることを話さなくちゃいけない。