俺様常務とシンデレラ

「それはもうお前のボスから再三聞いてる。あれだけ料金が低けりゃ普通は式もカジュアルなものだ。打ち合わせのときだってお前は何も言わないし、いきなり元に戻せと言われてこっちは驚いたぞ」

「うっ……ご、ごめんなさい……」


理久さんに呆れ返ったように言われて、さっきまでの勢いがしゅるしゅると萎んでいく。


でもここで引いちゃダメだ。

私が悪かったことは承知で、こんなところまで連れて来てもらったんだから。


王様に許しをこう家臣の気分で、私はしゅんとなりながらも、精いっぱいの想いを込めて言い募る。


「あの、それは本当に、申し訳ありませんでした。私に自覚が足りなくて……。だけど、常務が目指してきたものを、なんとか実現させたいんです」


私の様子を見て、理久さんがなんだか怪訝な顔をする。


『生意気な小娘が急にしおらしくなった』とか思ってるんだろうな……。

でも堪えるのよ、絵未。

理久さんが私のお願いを聞いて常務に協力してくれるなら、いくらでもしおらしくなってやるゾ!



私が唇をきゅっと引き結んで背の高い理久さんを見上げると、彼はしばらく真顔で私を見下ろしてから、鋭い目を細めてニヤリと笑った。


に、人相が悪い……!

まさに暴君だ!


だけどものすごく人の悪い顔で微笑んだ理久さんの表情は、鳥肌が立つほどキレイだった。
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