俺様常務とシンデレラ
「お前、元々の格式高いものをカジュアルにするために働きまくった俺に、また元に戻すためにさらに働けって言ってんのか?」
「む、ムリは承知です」
「あのいけ好かない"王子様"のために、わざわざ家にまで乗り込んできたと?」
ゾッとするほど美しく微笑む理久さんは、切れ長の瞳に私を映しながら、少しずつ距離を詰めてくる。
「もっ、もちろん、私にできることはなんでもお手伝いさせていただきます」
迫りくる迫力満点の精悍な顔つきに息を飲んだ。
「ほーう。なんでもするのか?」
「くっ……な、なんでもします!」
この人は、初対面の私をソファに押し倒して、いきなり手のひら越しに唇を押し付けてくるような男だ。
"なんでも"なんて言ったら、きっとひどく屈辱的なことをさせるに違いない。
だけどここで後ずさったら負けだ!
私が背筋をぴんと伸ばして胸を張り、随分と高い位置から見下ろす瞳をまっすぐに見上げると、薄く笑った理久さんの細くて繊細な指先が私の顎にかかった。
人差し指一本でクイッとさらに上を向かせられる。
そして理久さんは鋭い瞳で私を射抜く。
「それなら、俺の余計な労働費はカラダで払ってもらおうか? もちろん……」
顎に添えた指をサッと放し、両手を私の肩に置くと、そのままクルリと身体の向きを変えさせる。
理久さんは私の後ろから耳元に唇を寄せ、妖しく囁いた。
「ベッドの上で、だ」
私はその低い囁きと目の前の天蓋付きの立派な王様ベッドに、ゴクリと息を飲んだ。