俺様常務とシンデレラ
私が慌てて身体を起こす間にも常務はずんずん進んでベッドまで辿り着き、私の腕を掴んで引き下ろす。
そして私をその場に立たせると、眉間にシワを寄せた真剣な表情で素早く私の全身に視線を走らせた。
私の服は少し乱れていたけれど、それは理久さんが乱したのではなくて、私が勝手に暴れたせいで……。
常務は私の服に大した乱れがないことを確認すると、両腕を伸ばして私を思いっきり抱きしめた。
「じょっ、常務……?」
骨が軋むほどきつく抱きしめられ、常務が私の肩口に顔を埋める。
この1週間、ここまで常務に近付くことはなかった。
私の胸は久しぶりにきゅんと小さく高鳴ったけど、それ以上に驚きの方が大きかった。
常務は絶対、人前でこんなことするタイプじゃないのに。
そもそも、理久さんがいるのも関係なしに素を見せちゃうなんて。
それに……。
「なにもされてないか?」
私が他の男の人とベッドの上にいたことを、こんなふうに真剣な顔で怒ったり、心配してくれるなんて、ちょっと予想外だった。
私の想像ではせいぜい、バカとかアホとか言われて軽く怒られるくらいで、しかも1週間も壁をつくられていたところだったのに……。