俺様常務とシンデレラ

常務は片腕で私をしっかりと囲ったまま、ふたりの間にほとんど隙間をつくらずに私の髪をそっとなでる。

私はその仕草や優しい声にドギマギしてしまって、ただ身体を固くすることしかできなかった。


「ふん」


そんな私たちの様子を少し離れて見ていた理久さんが、挑発するように鼻で笑う。


「心配するな。そいつのキスならとっくにもらってるぞ」

「んだと……?」


私を抱く腕にさらに力がこもり、再び険悪なオーラを出しはじめた常務が理久さんをギロリと睨む。

ここ1週間すっかり落ち込んでいた私の胸きゅんセンサーは完全に復活し、感情を剥き出しにして怒ってくれる常務に、きゅうーんと胸が締め付けられる。


常務……!

それってジェラシーですか?

私が他の男にキスされてたら、そんなふうに本気で怒ってくれるんですか?


私はなんだかジーンときてしまってメロメロになりながら常務を見上げたけど、ものすごい形相で理久さんを睨み付ける常務の表情にハッとして慌てて訂正する。


「あっ、ち、違うんです! 危なかったけど、キスはされてないです!」


手のひら越しだったもんね、全然キスじゃないよ!
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