俺様常務とシンデレラ
だけど誤解を解いてあげようとする私の気遣いなどお構いなしに、理久さんはさらに常務を煽るようなことを言う。
「ふん、あれはもらったも同然だろ」
「もう! 理久さん! なんでそんなややこしくなるようなこと言うんですか!」
こんな常務を見せてくれたことにはちょっと、ほんのちょっとだけ感謝するけど、これ以上挑発する必要はないって!
せっかく私の"お願い"を聞いてくれそうなのに、肝心の常務と理久さんがケンカしちゃったら意味がない。
あわあわと慌てる私の様子を見て、私を抱きしめる常務の腕がピクリと反応する。
そしてなぜか、さっきまで理久さんに向けられていた細められた黒い瞳をじろりと私に向けた。
「お前、こいつのこと『理久』って呼んでんのか……?」
「えっ!?」
「……俺のことも、まだそんなふうに名前で呼んだりしないのに?」
ひゃあぁ!
ジェラシー・モードの常務はそんなところにまで反応しちゃうの!?
「当たり前だろ。キスも済ませて、これからコトに及ぼうとしてた仲だ。なあ、エリ?」
あああっ!
理久さんってば、またわけのわからないウソで挑発して!