俺様常務とシンデレラ
「ふ……ざけんなよ、てめえ!」
ムダに意味深な視線を寄越した理久さんを見て、ついに常務が私から腕を放し、肩を怒らせて理久さんに近づいて行く。
「きゃー! ダメ! 常務やめて! 理久さん、エリじゃなくて絵未です!」
私は必死にその背中にしがみついて常務を止めようとするけど、ずるずると引きずられてしまう。
「ふむ、こっちのほうが人間味があっていいじゃないか」
「おもしろがってないでウソだって言ってください!」
「止めるな絵未! 殴らせろ!」
理久さんは常務に胸ぐらを掴まれても呑気に笑ってるし、私の力ではまったく常務を止められない。
誰かあの人の口を塞いでくださいー!
「ふん、静まれアホ共」
ひとしきり愉快そうに笑った理久さんは、常務の手を振り払い、ぎゃーぎゃーと騒ぐ私たちに冷ややかな視線を浴びせた。
な、なんなんですか、その温度差……。
「いいか、そこの秘書。オープニングセレモニーの件は当然、すでに対応を進めている」
「え?」
そ、そうなの?
それならそうと言ってくれればいいのに!