俺様常務とシンデレラ
私はぽかーんと口を開けて、常務にしがみつく腕の力も抜けてしまったけど、常務は理久さんを睨んだままグルグルと喉を鳴らして威嚇しているみたいだ。
理久さんはそんな常務を顎で指す。
「こいつは散々俺を振り回した末に、自分の女がどれだけ素直で純粋でまっすぐなやつなのかを自慢してきた」
「えっ?」
わ、私のことを自慢……?
どういう経緯でそうなったのかはわからないし、また適当なことを言ってるだけかもしれないけど、私の頬は正直に反応してボンッと赤くなった。
「おい、デタラメ言うな。俺はただ、こいつの言うような夢みたいな世界をセレモニーで体現したいと……」
「同じことだろ。俺には惚気にしか聞こえなかったぞ」
な、なんだ、そう言うことか。
常務は普通に理久さんを説得しようとしただけじゃん。
理久さんってば、やっぱり適当なことを……。
そう思いながら火照った頬を両手で押さえても、熱は冷めず、私は常務の方を見ることができない。
なんだろう、今日ってめちゃくちゃラッキーな日かもしれない。
「……だが、今ならその気持ちも少しはわかる」
「は?」
「え?」
同時にマヌケな声を上げた私と常務を見て、理久さんがププッと吹き出した。
わ、すごい……。
理久さんが自然に笑ってる。