俺様常務とシンデレラ
「葦原大和。お前、もっと自分の女を大事にした方がいいんじゃないのか? もう俺はその気になれば2度その女を襲ってる」
クスクスと愉快そうに笑う理久さんは、厳しさやストイックさが抜けて、とても自然に頬を緩ませている。
って言っても、理久さんの言う"大事にする"って、小鞠ちゃんに対する溺愛みたいなことですよね?
ちょっとそれ、想像できないよ……!
理久さんの言葉に私は顔をしかめて、常務は拗ねた子どものように、少し唇を尖らせた。
「言われなくても、どんな女よりもいちばんに大事にしてるつもりだ」
きゃああ!
常務、今日ちょっと私にサービスしすぎですよ!
胸きゅんセンサー休止明け間もないんだから、いきなりそんなにとばさないで〜!
ひとりドタバタする私と、ぶっきらぼうに言う常務を見て、理久さんは鋭い瞳を糸のように細めて笑う。
あ……。
その表情、東堂会長の優しい微笑みにそっくりだ……。
「俺、仮面みたいな表情してるいつものお前より、ガキみたいな今のお前のほうがいいと思うぞ。その女が、そうさせてるんだろ?」
理久さんは東堂会長の面影をそのまま映したような顔で微笑んだけど、すぐにその笑顔を引っ込めていつもの精悍な顔つきに戻った。