俺様常務とシンデレラ
「ふん。午前の挙式の部は適任が見つからないから仕方なく小鞠を出してやったんだ。午後のパーティーにはもっと人が集まる。これ以上、小鞠のあんな可愛い姿を何処の馬の骨とも知れん男に見せてたまるか」
「あ、はい、ですよね」
やっぱりそういう理由!?
確かに小鞠ちゃんのドレス姿はすごく素敵だったけど、溺愛が過ぎると絶対嫌われるんだから!
私がなんとも言えない苦い顔で理久さんを見上げると、彼は鋭い瞳を緩めて私を見下ろした。
東堂会長に似たこの優しい微笑みを、ここ数日は何度か見るようになった。
だから私は、小鞠ちゃんがなんだかんだ言いつつも、このお兄さんを嫌いにはなれない理由がわかってしまう。
「心配するな。お前も十分キレイだよ」
「え?」
「まあ、小鞠には遠く及ばないがな」
「…………」
ヤバいよ。
余計なお世話だけど、この人恋人とかちゃんとできるのかな。
「ほら、そろそろ行くぞ。むこうも準備できた頃だろ」
理久さんが私の背中にそっと手を添えて、ドアの前に立たせる。
「うっ……い、行きます!」
私が緊張で顔を強張らせながらも力強く頷いたのを見て、理久さんが控え室のドアを押し開けた。