俺様常務とシンデレラ
今日の常務は、深い群青色のスーツ。
上品なブルーのそのスーツに合わせて、シャツもネクタイもそれぞれ濃度の違う青で揃えてある。
そして、おそろしく似合ってる。
その長い脚を辿って恐る恐る顔を上げれば、均整のとれた身体の上に、小さくて端正なお顔が座っている。
しっかりと整えられた黒髪と、濡れたように光る黒い瞳。
くっきりとした二重の瞼と長いまつげが、その瞳を囲っている。
印象的なのはまっすぐな鼻筋で、高い頬骨と、シャープな顎のラインがその造りを際立てていた。
いつもはため息が出るほど甘い微笑みを浮かべている常務だけど、今は腕を組んでその目を細め、ギロリと私を見下ろしていらっしゃる。
「いいか、何度も言わすな。もうお前のおっちょこちょいには付き合いきれん! クビだ!」
「……どうしたんですか?」
いつもにこにこしていて、紳士的で、優しくて、まるで王子様みたいな常務。
彼の豹変ぶりに驚いてぽかーんと口を開けて見上げると、舌打ちをした常務が私の腕を掴んで引っ張っり上げ、立たせる。
舌打ち?
今、王子様が舌打ちした!?
身長162cmの私だけど、それでも常務は見上げるほどに背が高い。
間近で見上げる彼はどうやら、初めて見るお怒りモードのご様子。
そして常務は、私がこの1週間で仕出かした数々の失態を早口に並べたてた。