俺様常務とシンデレラ
小鞠ちゃんは私が付けていたアンクレットのことを覚えていたし、あの日駅で会った私がひどく落ち込んでいたから、エレナちゃんにお願いしてアンクレットを返してもらったらしい。
エレナちゃんはすっかり元気になっていて、私のためならと、快く渡してくれたんだって。
常務は私があのときの女の子だと知っていながら、私を引き止めはしなかったし、秘書になった後でさえ本気でクビにしようとした。
だけどそれは、常務が過去のこととは関係なく、私を見てくれていた証拠だ。
今の私だけを見て、好きだと言ってくれているんだ。
私はそれを、運命だと思ってもいい……?
「これ、母さんの特注で、俺の10歳の誕生日だったあのリサイタルの日にくれたものなんだ」
固まったままアンクレットを受け取ろうとしない私を見て、常務が一歩近づいた。
そして繊細な指先で器用に金具を外そうとしている。
「このリボンにはもちろん、『贈った相手と永遠に結ばれる』って願いも込められてるけど、それともうひとつ……」
まだ衝撃から抜け出せない私を置いてけぼりにして、常務はどこかうきうきとした様子で話し続ける。